もの忘れについて
お知らせ
当クリニックでは、認知症の診断、薬物療法を行っております。
診断や予防、お困りの症状について対処方法などをご相談いただけます。
問診と検査の後、近隣の病院にて頭部のMRI検査も受けていただけます。予約や検査の状況次第ですが、できるだけ時間をかけずに診断いたします。
介護保険の申請を行って、デイケアへの通所、看護師やヘルパーによる訪問など利用できるサービスがあります。ご家族だけで悩まれることのないようサポートさせていただきます。
もの忘れ
老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れ
認知症によるもの忘れと老化によるもの忘れの違いは、体験した事自体を忘れるのが認知症であるのに対し、老化によるもの忘れだと体験したことは覚えているが、細かい内容については思い出せなかったりします。(家族旅行をしたことは覚えているが、ホテルの名前が出ないなど)
最近になり新しくMCI(軽度認知機能障害)という考え方が広まり注目されています。
MCI(軽度認知機能障害)というのはアルツハイマー病など認知症の発症前の状態を意味する用語で、その後次第に認知症になっていく可能性が一般の方よりも高いと考えられています。
そのため、予防や治療を早期から行っていくことができれば、進行を遅らせてよりよい生活を長く送ることができるようになると期待されています。
MCI 軽度認知機能障害(けいどにんちきのうしょうがい)
認知症の前の段階と考えられている。物忘れを自覚しており、客観的にも記憶検査で記憶力の低下があるが、日常生活は普通に行う能力がある。1年後には10%が、最終的には約半数が認知症になると言われています。
気づかれやすい兆候(ちょうこう)
記憶障害
少し前の出来事を忘れている
同じ質問・話を繰り返す
置いた場所、しまった場所を忘れる
蛇口、スイッチ、ガス栓の締め忘れ
今なにをしようとしていたのかわからない
時間の見当識障害
日付や曜日がわからない
どれくらい前のことかわからない
性格変化
猜疑心(さいぎしん)
依存傾向:子供っぽい仕草や口調
怒りっぽい
話の理解困難
とんちんかんな応答
つじつまを合わせようとして作話になる
少し複雑な話は理解できない
意欲の低下
長年の趣味をやめた
物事に興味や関心がなくなった
外出しない
MCIの治療
生活療法
メタボリックシンドローム(肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧症が集まったもの)の改善
適度な運動
食品
動脈硬化にならないよう注意が必要です。
一般治療薬
非ステロイド系消炎鎮痛剤(COX-2阻害薬)
抗酸化物質(ビタミンB6、B12、Eなど)
スタチン
認知症治療薬
アルツハイマー型認知症
初老期(40歳以上65歳未満)〜老年期(65歳以後)に発症する認知症の中で一番多く、約50%を占めます。
記憶障害、失語、失行、失認、遂行機能障害などが主な症状で、時に性格変化、幻覚、妄想、夜間せん妄、徘徊(はいかい)、食行動異常、排泄行動異常などが生じ、ご家族が対応に悩まれて相談されることが多いです。
アルツハイマー型認知症の症状
近時(きんじ)記憶
数分から数ヶ月前の記憶が障害されます。
昨日、今日といった、当然覚えているはずと思われるような出来事を覚えていない、約束したことがらを覚えていない
陳述(ちんじゅつ)記憶
エピソード記憶とも呼ばれ、本人が体験した記憶が障害されていきます。
昨日誰に会ったか、昼食は何だったか、どのように病院まで行ったかなどが答えられないようになります。
病状が進行していくと古い情報である遠隔記憶も障害されていきます。
失語(しつご)
言葉の理解が悪くなり、ごまかしをしたり、まわりくどい言い回しをしたり、違う意味で言葉を使用したりします。
失行(しっこう)
3次元の図形で遠近がわからなくなります。
次第に単純な動作や物品使用のまねることができなくなり、進行すると実際の物品を使用した複合的な使用も困難になり、服を脱いだり着たりするのも難しくなります。
失認(しつにん)
視空間失認といって、慣れている道で迷ったりするようになります。
相貌失認になると、近親者の顔を見てもわからなくなります。
遂行機能 (すいこうきのう)
目標を設定し、計画をたてて、効率よく遂行することが困難になります。
BPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)
上記の中心となる症状と同時に起こる、心理症状や行動の障害のこと
不安、焦燥(しょうそう)、落ち着かない、身体のあちこちの調子が悪いと言う
不眠、うつ状態、興奮、暴言、暴力、性格変化
妄想「大事な物が盗まれた」、「配偶者が別の人間だ」などと言います。
夜間せん妄(病院に入院された時に問題となることが多い。眠れずに徘徊したり作業をしたりするが、朝になると覚えていないこともある。)
アルツハイマー型認知症の薬
錠剤
ドネペジル(アリセプト)
ガランタミン(レミニール)
メマンチン(メマリー)
内服がむずかしい場合は湿布を利用しましょう
リバスチグミン(イクセロンパッチ / リバスタッチパッチ)
レビー小体型認知症
現在、アルツハイマー型認知症とならび注目されているのが、レビー小体型認知症です。認知症全体の約20%がこの病気だと言われています。
認知症と名前がつけられていますが、実際はもの忘れが目立ちにくく、認知症とは家族が気づかないことがあります。
もの忘れではなく、幻視(げんし)、パーキンソン病様の症状、認知機能の低下(注意力の低下・興奮・暴言・寝言を言うなど)が中心になります。
他には、興奮や暴言などご家族が困られる症状が強いため、それらを抑えるように薬を飲むと薬剤過敏性(やくざいかびんせい)があるため副作用が強く出て、症状がさらに悪化したりします。
経過は歩行が徐々に困難になり、転倒してしまい寝たきりになりやすいこと、飲みこみの力が落ちて誤嚥(ごえん)しやすくなることが特徴です。また、うつ病を合併しやすいと考えられています。
残念ながら現在のところ、頭のCTやMRIをとってもこの病気かどうかはわかりません。進行したアルツハイマー型認知症のようにわかりやすい所見はないのです。なので、脳の画像を取ったが明らかな認知症とは考えにくいと言われたけれども、上記のような症状がある場合はこの病気を疑います。
また、うつ病を発症した後に上記の症状が出てきたり、パーキンソン病を患って治療を受けていた後に徐々に上記の症状が出てきたときも強くレビー小体型認知症を疑います。
レビー小体型認知症の症状
幻視
ありありとした幻視。
「死んだはずの家族が見える」「子どもや虫が見える」
幻視のために部屋にいることをこばんだり、手で払う素振りをしたりします。
パーキンソン病様の症状
表情がかたく無表情
姿勢が前かがみ(猫背)
身体が左右どちらかに傾いている
肘の関節が曲がった状態、両手は身体の前に位置
すり足のような歩行
認知機能の低下
記憶力の低下は目立たないことが多い
意識がはっきり/遠のくなど変動しやすい
注意力の低下
レム睡眠行動障害(夜間に大声を出す、叫ぶ)
興奮(こうふん)・暴言(ぼうげん)・徘徊(はいかい)
うつ病の合併
自律神経症状
立ちくらみ、便秘、発汗、寝汗、頻尿、だるさ、めまいなど
レビー小体型認知症の治療
アリセプト
他、症状に応じてパーキンソン病薬、漢方、抗精神病薬
とにかく薬剤に過敏であるため症状がおさまらないばかりか、副作用が出ることが多いため、診察とご家族の情報をもとに薬の調整が必要となります。
血管性認知症
血管性認知症は脳の血管障害によって出現した認知症のことです。
日本ではアルツハイマー病とともに認知症の多くを占めています。
血管性認知症の特徴はもの忘れ、意欲の低下、関心がなくなるなど様々な症状が出ますが、判断力や理解力、人格などは比較的悪くならないため、アルツハイマーとは違って症状がまだら状だと言われています。
血管障害の原因としては小さい梗塞(血管がつまること)がたくさん起こる多発性ラクナ梗塞が多く、早期から歩行障害や尿失禁などが出てくることが特徴的です。(個人差がかなり多いです)
さらに、精神症状としては
うつ
うつが最も出てきやすい症状になります。
うつに伴って不安感、焦燥感(しょうそうかん:落ち着かない感じ)、不眠で困られることが多いです。
せん妄(せんもう)
せん妄は意識障害(いしきしょうがい)をともなう精神症状が集まったものを意味します。
睡眠のリズムが障害されて昼夜逆転したり、興奮、錯覚(さっかく)、幻覚(げんかく)、注意力の障害などを生じます。朝になると何も覚えていないことが多いです。
なんらかの感染、心臓の病気、脱水、薬が合ってない、入院して寝る場所が変わった、などが原因で起こることもあり、原因の除去や薬物療法が重要になります。
もの盗られ妄想(ものとられもうそう)
アルツハイマー病よりも血管性認知症の方が多いと考えられています。
興奮や暴力につながらないよう注意が必要です。
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(電話による診察はしておりません。)